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田中 芳 遺作展 [2016]

田中 芳 遺作展
けれども、たしかにある光

2016年10月21〜11月1日

その奥に見えるもの

いつぞや京都旅行を計画した時、居住していたことのある芳さんにおすすめ
の場所を訪ねたことがあった。「私は京都御所へよく行ったの」。真冬でも
植物があったからスケッチに通ったと、楽しげに言う。若干20歳で単身、画
業に向かっていた希求心に驚かされていた。
 田中芳さんは建築と融合するほどの構成力を持っていたから、都会的なデザ
インと色彩、工芸の質感を味わうだけでも新鮮だった。「庭」シリーズのイン
スタレーションは、洗練された全体を楽しんでいたが、ある時、抽象作品では
なくこれは実写かもしれない、と気づくと同時に作家の凝視を感じた。部分を
消したり配置されている草の葉や水輪も、彼女のスケッチブックのどこかに載
っているにちがいないと思い、御所での姿が浮かんだ。
 そうして「線」、「塵」とより抽象化して、同質のものが込められた。作家
が四季を通った庭の奥、草木や水や石のその奥に見ようとした何か有機以上の
エネルギーを、今、どの作品にも感じる。それは本人が最後「光」と呼んだも
のに通じているように思う。
                            (栗原良子)


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「塵」について

 生命の存在に最初に意味があるのではなく、意味は
生きていく上で各々が作っていくのだ。それが私にと
って漂う ”塵” なのである。 一瞬の形を切り取って、
おり、銀箔の空間も一時も同じ状態ではなく、周囲の
影響を受け、刻々と変化し続けている。永久に変わら
ないという ”憧れ” ではなく、後戻りできない変化と
いう ”事実”。絵画もあくまで物質だけども、そこに
は無情の精神性が潜んでいる。
 絵を描く事は、現実の感覚と霊的な直感、意味を考
えてしまう思考と行為に伴う感情のせめぎ合い。いく
ら共感しても100%の一致などありえない制作と鑑賞
という行為。人生そのものだと思う。
     
                2010 田中 芳




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